茜色の空《About Story》
「そういえば、あなたにあげるものがあったわ」
と突然ネイビーの箱を手渡された。
いつもの食卓
変わらない風景の中に
見慣れない小ぶりの小箱が浮き上がったように見える。
「あなたの友だちに作り替えてもらいなさいよ」
そう言ってニヤリと笑う母をよそ目に
なんだろうと思い箱を開けた。
そこには見たことのない美しい
赤紫色の宝石。
「お父さんが昔くれたのよね」
母は隣で懐かしげに話しだしていたけど
私はまるで宝石に吸い寄せられたかのよう。
じぃっと見入ってしまった。
まるで父が生まれ育った
海辺の街に広がる夕焼けのようだ。
父はその街を出て、
もう少し大きな不便のない街に引っ越し
母と結婚した。
故郷に帰るのは
一年に一度、お墓まいりの時くらいだ。
もしかして、
あの空を母に見せたかったのかな。
あの空の下で微笑む母を好きになったのかな。
こっぱずかしくてそんなこと、
父には聞けそうにないけど
でもちょっとだけ、
父と母の昔の話を聞いてみたくなった。
◇About Story◇
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