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60歳 男の本音 About Story

俺は男だから指輪なんてしない。

 

ましてや農家だから、
つけたって泥だらけになるし傷つくだろう。
そう言って何年も箱の中にしまい込んでいた指輪があった。

 

これを買ったのは結婚したときだから、
かれこれもう40年も前になる。

 

母ちゃんはまだしてるみたいだけど
俺はしてなかった。
キャラじゃないような気がしたし
なんとなく恥ずかしかったんだ。

 

ある日、
バイトで手伝いに来てくれた若者が
結婚指輪をしていた。
泥だらけになっても外さない。
傷がついても御構いなしだった。

 

だからある日聞いてみたんだ。
「お前、なんで指輪してんの?」
「え、買ったからですよ。」

 

あまりに当たり前すぎる答えに
一瞬キョトンとなり、
(あれ?俺考えすぎてたのか?)
なんて思った。

 

久しぶりに箱から出した指輪。
左手につけたら小さくて入らない。
農作業で指が太くなったようだ。
そりゃあもう50年も畑仕事してるしなぁ!
ちょっと誇らしい気分になった。

 

今の俺ならつけてもいいかもしれない。
サイズを大きくしてもらって
表面を磨いてもらった。
真っ黒くて傷だらけの無骨な手だからこそ、
似合うらしい。
お店の人がそう教えてくれた。

 

年輪のように、
歳を重ね許せることが増えて、
今だから似合うものもあるのかもな。
また誇らしい気分になった。

 

 

◇About Story◇
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