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私の心には穴が空いていたのかもしれない 《About Story》

 

執着しない人
それが私の印象らしい。

 


欲しいけど手に入らないものは
縁がなかったとすっぱり諦められるし。
どうしても欲しい!っていうものって
これまでの人生を振り返っても思い出せないな。

 


例えば進学や就職も
「ここに入りたい」
って思ったらそれなりに努力すると
結果がついてきたタイプ。

 


みんなからは羨ましがられることが多かったけど、
実は心が震えるような感動とか悲しみも
あまり感じたことはなかった。

 


結婚を考えていた彼との関係がぎくしゃくして
結局破談になった時も、そりゃあ悲しいけど
「仕方ないよね」
って思ってあまり引きずったりしなかった。

 


彼からは
「お前は強いよな」
と言われた。

 

 

 


そんな私のクローゼットの中には、
父が買ってくれたお気に入りの宝石箱がある。
宝石箱といっても、
とびきり高級なジュエリーなんて入ってない。
かわいいなって思って買った
指輪やイヤリングが入ってる。
ひとつだけ気になってるのは、
壊れたままそのままになっているリングだった。

 


ダイヤモンドが外れたリング。
仕事中、気づいたら穴があいたみたいになってて
一瞬ショックだった。

 

 


でもこの時も、
「仕方ないか」
ってそのまま、宝石箱へ。
いつか直そうかな、その時がきたら。
なんて思ってた。

 

 

 


台風が通り抜けた青空の広がる夕暮れ、
手持ち無沙汰でクローゼットの中を片付けた私は、
その穴があいたリングを見つけた。

 


どこか、寂しそうな
行き場を失った私の気持ちみたい。
この穴を埋めたら、
何か私の心にもみんなと同じような感情が生まれてくるかな。
そう思って、修理に出してみた。

 

 


2週間後完成して戻ってきたリングは
まるで別の物のように輝いていた。
そして同時に私の胸にも
ふわっとした感じたことのない
あったかい感情が生まれていた。

 


壊れたものにまた命を吹き込むことで、
私の心にも、灯がともったのかもしれない。

 

 

 

◇About Story◇
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